やや、しばらくしてから、
「弥勒よ、わたしはいま汝らに、
世間の人々のことを語った。
このようなわけであるから、
汝らは世間に戻ることなくして、
悪を制止し、善行をなせ。
恩愛の生活も、いかなる栄華も、
決して長続きはしない。
真の快楽は世間には存在しない。
いま汝らは仏陀のもとにいるのであるから、
努めて精進し、
至心に浄土往生を願うべきである。
不審ある者は、つぶさに問うがよい」
弥勒菩薩は地に膝をつけて仏陀を礼拝し、
申し上げました。
「深いみ教えを聞かせていただきました。
世尊は過去現在未来を見通す智慧をもって、
私たちを導いて下さいました。
私たちが今み教えを聞かせていただくことができるのも、
世尊が過去世に求道なさって、
勤苦して下さったおかげであります。
いま世尊にお遇いし、
そして阿弥陀如来のみ声をお聞きして、
歓喜せぬ者はおりませぬ」
お釈迦さまは頷かれて、
「仏陀は無量無数におられるが、
人間に降臨され人間の言葉で説法されることは稀である。
今まさしくわたしの口から仏陀の説法がなされた。
疑惑を断滅し、愛欲を止滅させるものは
仏陀の智慧しかないのである。
弥勒よ、まさに知るがよい。
汝は計り知れぬ過去から菩薩の修行をしているのに、
いまだに五悪趣から出離することができずにいる。
しかるに今、汝は仏陀と遇って、
阿弥陀如来の仏法を聞くことができた。
善いかな、善いかな、甚だ快し。
汝は自らの生老病死を厭い、
ますます諸々の善を励み、
身体を安楽にして心の垢を落とす修行に邁進せよ。
今生での修行の辛さなど取るに足らぬ。
死して後には生死輪廻から解脱し、
阿弥陀如来の浄土に生まれて、
二度と煩悩に苦しむことのない、
真の快楽を享受できるのである」
弥勒菩薩は恭しくお答えなさいました。
「かくも懇ろに教え諭してくださいましたからには、
仰せの通り修行に励み、決して退転いたしませぬ」
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2002.11.16